父さんの自転車

なかちゃん号  父さんが毎日乗っていた自転車
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私が最後に見た元気な父さんは 
ニコニコと この自転車にまたがり バックミラーの中に立っていた
その15時間後 父さんは 突然死んだ

父さんは 菓子パンと駅伝が好きだった

父さんが死んでから 私は毎年 お正月の駅伝に行っている
ついでに言えば 菓子パンも食べている^^; 

最初の年 駅伝の応援には なかちゃん号で行ったけど
乗らないでいるうちに どんどん動かなくなっていった

いつもよくしてもらっている自転車やさんに なかちゃん号を見てもらうことに
(自転車やさんのおじさんは すぐになかちゃん号を迎えに来てくれた)

6年近く 放置してしまったけど 思い出の自転車で 
どうしても処分できなかったこと
できることなら 再生したいと伝えた

おじさんが聞いてくれた・・・・「お父さんは 何歳?」
偶然にも おじさんは 父さんと同じ年生まれだった

その日のうちに 電話があった
「もう無理だなあ 肝心なところがさびて動かないんだよ」
「なおそうにも ねじもはずれない ここは海に近いからね・・・」
「もしなおしても すごい金額になるし 見た目も変わってしまう」
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そして・・・
「思い出の自転車って言ってたからね すぐにどうこうはしないよ」
「ゆっくりいつでもいいから 写真を撮りにおいで」
「こっちで処分してもいいし もしいやなら もう一度 家に運んであげようか」

考えた・・・ 考えた・・・
「写真を撮りに行きます あきらめることにします」と 電話で返事してからも
考えた 考えた・・・ 

あれは 最後の最後まで 父さんが乗っていた自転車

晴れたある日 カメラと おじさんへのお菓子を持って 自転車やさんへ向かった
やさしいおじさんのところで 処分してもらおうと 心に決めて自転車をこいだ

でも その ほんの10分の間も 考えた・・・

お店についたら なかちゃん号とのお別れだ
やっぱり 家に戻してって言おうか  じゃあ いつ処分するの?
いつかは処分しないといけない
いくらかかるか もう一度聞いてもいいかな 

この世のものはすべて借り物 命さえ借り物 物は物でしかない
だから 執着しちゃいけない 処分しよう

・・・と こんな 普段では思ってもいないことまで 心の中にかり出して
自分を納得させようとする 自分

お店に着いたら おじさんが 写真を撮りやすいようにと 店先まで 運んでくれた
「思い出の自転車 なんとか再生してやりたかったんだがね」
「もう少し早く持ってきてくれれば」 (申し訳なさそうに言う おじさん)

おじさんの言葉と おじさんの笑顔と おじさんのやさしさで 心が決まった

「ありがとうございました」

ゆっくり ゆっくり 何枚も写真を撮った
家に保管していた ワイヤーロックも持っていき 自転車につけた

写真を撮り終わって おじさんにお礼をいい 処分の費用を聞いたら
「あんたから お金もらおうなんて思ってないからいいよ」  

お菓子持って行ってよかったよ
「なんだよ いいよ よかったのに」と言いながらも
おじさんが 笑顔で 袋をのぞいて 受け取ってくれたから


バイバイ なかちゃん号
ごめんね なかちゃん号 
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by kyoco-chan | 2007-06-29 02:00 | 父さんへ